May 15, 2005
ΑΩ [review]
読了。確かにどこかで「ウルトラマン」との関連を示したものを見たことがある。 ハードカバーで出版された時に結構話題になっていたかも知れない。幸いにも私はそれを途中までは忘れて読んでいた。おかげで幾らか楽しみが増したかもしれない。 読み終わった後検索してみたらこの作品に関して山ほどウルトラマンとの関連についての記述が見つかった。 だから「ウルトラシリーズ」との関連を書くことは特に問題にならないだろう。
私のような初期のウルトラシリーズを繰り返し再放送で見ていてほとんどのエピソードの記憶(細部は別として)がある世代の人間にとって、ほとんど説明不要とも言えるオマージュ満載の小説。
主人公の「諸星隼人(言わずもがなだけどモロボシ+ハヤタね)」が、もう一人(?)の主人公の「ガ」の共生に気がつき、戦闘形態に変身しようとしてビルから飛び降りるシーンが私には印象的だった。 これは「帰ってきたウルトラマン」のナックル星人のエピソード(37話)に対応するものだと思う。こちらでは変身に失敗するけど。 これが最後でウルトラセブン風に地球を去る理由につながる。
機能を停止した脳から自我を引っ張り出す方法と精神の「在り方」についての説明には正直やられたと思った。 私も同様のアイデアを持っていた。あっさりとした使われかたをしていたので少々がっかりしたが後でもう一度持ち出してきてそれなりの使いかたをしていたので納得。 私がかかえていてもこういう作品にはならないからね。 よく考えてみたら時系列的には小林氏の方が先か.....
初期の「ウルトラシリーズ」になんらかの思い入れがあって、小林泰三氏の「意地の悪さ」と鬼畜さ(ダメ男の主人公にあからさまな好意を寄せている高校生の義妹をあっさり死なせてしまうとか)、中盤から漂ってくるやるせなさに耐えられるなら読むべき作品。 ウルトラマン関係に興味が無くてもたぶん標準以上に面白い。 小林泰三氏の作品は結構人を選ぶと思うので、他の作品読んで大丈夫ならお薦めだろう。 たぶん大丈夫だよ(何が?)