Dec 31, 2005

日常のリスク [本,雑誌など]

確保した意味があるんだかないのか

  • DavidRopeik George Gray, 監訳 安井 至,訳 原 美永子「RISK リスクメーターではかるリスク」(丸善株式会社 税別1900円) ISBN4-621-07623-X
  • 日常にある「リスク」を評価したもの。特に興味あったのはアスベストとタバコの比較。さて...

    ここでいう「リスクメーター」はそれぞれの項目のリスクを評価して直感的にわかり易く示したしたもの。対象は50項目があげられていてそのうち21項目については細部についての解説が行われている(21項目の中にはアスベストは入っているがタバコは入っていない)。あくまでも目安のための試算であってそれほど厳密なものではない。 厳密な値が必要であれば参考文献を当たれということらしい。

    項目によっては日本における現状のデータも合わせて示してある。

    リスクの評価は深刻性と被害の起こりやすさ(被害を受ける人の数)を含んだものになっているとしている。リスクを評価するための視点として以下のものが示されている。

    有害性
    リスクの性質、有害物が被害を及ぼすメカニズム
    曝露の範囲
    リスクにいつ、どこで、どのように触れるか
    影響の範囲
    どの程度の被害を、どのように、どの程度の人口が、どのような種類の人が受けるのか、もっともリスクが高い人は誰なのか、一時的なものなのか長期的なのか、生命にかかわるのか、被害の可能性はどれくらいか等
    リスクの削減
    リスクを最小にするためには何ができるか(実現可能な回避方法があれば少なくとも将来的にはリスクは小さくなる)

    一般の人向けに書かれていることもあり、具体的なリスクの数値データが少ない事が不満といえば不満。

    問題のアスベストとタバコのリスクについては別建てにしておこう

  • アスベストとタバコのリスク
  • アスベストについて
    曝露の可能性:1-2 影響:3-4 (それぞれ10段階の値)

    アスベストは一般の環境では有害性が認められる程の曝露になることは少なく、例えば家屋等で使用されていても樹脂塗料の吹き付けなどを行うことでリスクを回避することが可能な場合が多いということらしい。逆に言えば樹脂塗料の吹き付けなどの方法が取れない場合のみ除去が推奨されると書かれている。

    健康への問題が発生した場合の深刻性は高いが、問題の発生する可能性は高くない(日本におけるアスベストによる健康被害、中皮腫の発生は年間数百人程度。ただしこの数値は今後増える可能性はある)。

    喫煙習慣の有無によって影響度は大きく変わる。アスベストに曝露している人でかつ喫煙習慣のある人は、アスベストに曝露していて喫煙習慣のない人に比べて進行性の肺がんに罹患する確率が50〜90倍になる。

    タバコについて
    曝露の可能性:5 影響:9

    扱われている50項目の中ではほぼ最高レベルのリスクですな。 ちなみに影響に9がついている他の項目は「がん」「肥満」。 簡潔に書かれているので引用する

    タバコへの曝露によって影響を受ける犠牲者の数は膨大である. ここでたった一つの統計値を繰り返そう. 現在, タバコをやめる意思のない4700万人の喫煙家(米国での数値らしい)のうち2人に1人はタバコへの曝露によって死亡するだろう.

    現状ではタバコの方がはるかにアスベストよりリスクが大きい(知っていたけど)。 アスベストが社会問題になるほど大きく取り上げられるのにタバコに対してはわずかな税金の引き上げ程度の対応しか行われないのはおかしな事だ。

    喫煙者を減らすことは医療費の削減に大きな効果があると考えていいと思う。 タバコに対する税率を大幅に引き上げて(おそらくはアルコール類についても)その分を医療補助へ回すといった事は検討に値する事だと思う。少なくともタバコ増税分を意味があるのかないのかよくわからない教育補助にあてるよりも正当な事だと思う。

Posted at 23:57 in 本,雑誌など

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